JLOM議長就任のご挨拶
2025年10月吉日

さて、伝統医学の国際化、標準化はいよいよ、活発化しています。東アジアの伝統医学は人類の英知であるので、その保全は言うまでもありませんが、さらに伝統医学の有効活用であればよいのですが、その知識の一国の独占ということは、許されないことあるというのが日本のスタンスです。そのようなことはほかにも見て取れます。たとえば、(ガソリンで動く)自動車を発明した国しか自動車を作れないなどとなれば、多くの国が自動車を製造ができず、その恩恵から外されてしまうのです。知的財産をないがしろにするわけではなく、はるか昔に公知になった知識は、一国のみの利益の独占は許されないということです。つまり、そのような知識や知恵は一国のものでなく、それが伝わった国々での応用も含めて、多くの国が享受すべき人類の英知であり宝ともいえるものです。
現代医療が飛躍的に発展する一方で、何千年にもわたって人々の健康を支えてきた伝統医学の知恵と実践は、今なお多くの国や地域で重要な役割を果たしています。しかしながら、国際的な制度、研究基準、安全性の評価、そして文化的な理解の面では、いまだ多くの課題が残されています。
私たちJLOMは、こうした課題に対しても、科学的根拠と伝統の尊重を両立させながら、国境を越えた対話と協力を推進してまいります。伝統医学が「補完(Complementary)」ではなく「統合(integrative )」の立場として、未来の医療体系の中に確かな位置を築けるよう、多様な視点を尊重し、実践と政策の橋渡し役を担っていきたいと考えております。
議長としての私の使命は、各国の専門家、実務者、政策立案者との連携を深め、共通の理解と国際的な基準作りを進めることにあります。また、若い世代への継承と、持続可能な教育・研究体制の構築にも力を入れてまいります。 就任時のトピックスがあります。このたび、ISO/TC249/SC1の事務局(上海)より、ISO/TC249/SC1(TCM)の Plenary meeting(第16回)の2026年6月に東京都内で開催を正式に打診され、受諾することとなりました(9月末日現在)。日本での開催は、2014年の京都になりますので、受諾した場合は、日本での開催は12年ぶりとなります。本会議を、日本で開催するメリットとしては、
① ISO/TC249/SC1の活動を日本の政治家や行政へアピールできること
② 国内委員の多くが国際会議を経験し、各規格作業の進捗状況を把握できること
③ 将来を担う若い人材が国際会議の参加経験を積めること
④ 今後の国際標準化の方向性に関する日本国内での議論を活発化できること
などが考えられます。また、開催にあたっては、医療関係その他の産業界の協力も不可欠です。前任の伊藤隆前議長のもとで開催の決済がとられ、引き続きの開催準備と実際の開催を行いますので、周知するとともに、開催が方向付けられた後に、組織委員会を立ち上げて準備に望む予定でございます。
多くの伝統医学に関連する解決しないといけない課題が山積しておりますが、どうか関係各位のご理解とご支援を賜りながら、ともに伝統医学の国際化・標準化の未来を築いていけますことを、心より願っております。 以上で、議長就任のあいさつといたします。どうぞよろしくお願い申し上げます。
敬具
日本東洋医学サミット会議議長
並木 隆雄