JLOMのWHO活動に関する貢献
はじめに
世界保健機関西太平洋地域事務局(WHO/WPRO)や世界保健機関本部(WHO HQ)における伝統医学の標準化活動に関して,日本の代表としてJLOMが対応をしてきた.JLOMは,以下の会議に代表団を派遣して,日本としての意見を主張してきた.あるいは,これらの持ち回りの国際会議開催を韓国や中国と同様に,日本国内でも開催してきた.
WHO/WPROの事業に関する協力
伝統医学の品質,安全性,信頼性,効率と互換性を高める目的で,2004年から「エビデンスに基づくアプローチによる標準化」をテーマに,経穴の標準化,経穴の命名や東アジアの伝統医学用語の標準化などの作業に関して,WHO/WPROが検討を行ってきた.
a)鍼灸の経穴部位に関する標準化
2006年11月、つくば市(茨城県)におけるWHO/WPRO主管の国際会議で、経穴の標準部位に関する合意が得られた。そして,2008年5月に"WHO Standard Acupuncture Point Locations in the Western Pacific Region)(日本語タイトル『WHO/WPRO標準経穴部位-日本語公式版-』)として発刊された.現在、中国、韓国でも自国語で翻訳出版され、世界中で標準部位として活用されている.
b)伝統医学用語の標準化
2007年8月に WHO international standard terminologies on Traditional Medicine in the Western Pacific Region(『西太平洋地域伝統医学国際標準用語集』(IS))が刊行された.日本,中国,韓国の伝統医学用語に関して,特に,2国間で使用される用語を中心に検討された.英語表記は,用語の内容ではなく漢字を逐語訳する傾向がみられている.
WHO HQによる国際疾病分類改訂作業に関する協力
ICD(国際疾病分類)は,疾病,傷害及び死因の統計を国際比較するためWHOから勧告される統計分類である. ICDに基づいて分類されたデータをもとに,人口動態統計として死因統計を各国が公表している. この他,3年おきに実施される患者調査や毎年実施される社会医療診療行為別調査,医療保険の各保険者が公表する疾病分類別統計などにも日本では利用されている.
2007年にICD第11改訂(ICD-11)作業開始がWHOより発表された.この改訂の目的は,新しい知見を導入すること.日中韓の伝統医学を新たに導入すること.電子環境におけるシステムとすることなどである.伝統医学用語に関しては,用語の内容が示す英語表記にする方針で行われた.このICD-11は2018年5月のWHAで承認されると,日本はICD-11を導入し,使用する方針である.
日本の伝統医学である漢方医学や鍼灸の診断用語もICD分類のひとつとして使用できるようになり,いろいろな領域で伝統医学に関する統計的な検討が可能となると考えられる.
まとめ
これらの事業が漢方や鍼灸などの日本の伝統医学の臨床,研究,教育などの分野で活かされることで,伝統医学のさらなる発展が期待される.