よくある質問と回答
よくある質問
【漢方薬】
- Q1 漢方薬にはどのような形状のものがあるの?
- Q2 漢方薬には副作用がないの?
- Q3 医師の処方がなくても買えるの?
- Q4 同じ症状でも違う漢方薬が処方されることがある?
- Q5 漢方薬と西洋薬やサプリの併用は問題ない?
- Q6 保険診療でも漢方薬を出してもらえる?
- Q7 漢方薬は何年も飲み続けていいの?
- Q8 漢方専門医にはどうやったらなれる?
- Q9 漢方薬服用中に飲酒は問題ない?
- Q10 漢方薬と鍼灸は併用していいの?
【鍼灸】
- Q11 鍼灸治療には保険が適応されない?
- Q12 鍼は痛くないの?
- Q13 鍼は何でできてるの?必ず使い捨て?
- Q14 鍼治療を受けてはいけない人がいるの?
- Q15 灸にはいろんな種類があるの?
- Q16 鍼灸師にはどうやってなるの?
- Q17 鍼治療を受けるとだるくなることがあるのはなぜ?
- Q18 灸はいつどのくらいしたらいいの?
回答
【漢方薬】
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Q1 漢方薬にはどのような形状のものがあるの?
(A) 漢方薬の形状は、煎じ薬(湯剤)、エキス製剤、散薬、丸薬などに分けられます。基本となるのは、生薬を水で煎じた薬(湯液)です。同じ処方でも、患者さんの体質や状態に合わせて、種類や量を調節できるメリットがあります。ただ、30~40分煮出す必要があり、手間がかかります。
エキス剤、散薬、丸薬は、そのまま内服でき、携帯にも便利です。成分の種類と量が決まっており、個人ごとの調整はできません。エキス製剤は煎じ液を濃縮・調盤したもの、散薬は生薬を粉末にしたもの、丸薬は生薬粉末をハチミツなどで丸化したもの、となります。一般に、成分量は、湯液のほうがエキス製剤よりも多くなっています。 -
Q2 漢方薬には副作用がないの?
(A) 副作用はあります。最も多いのは甘草(かんぞう)で、長期的に服用しているいる患者さんの2~3パーセントに血圧上昇や浮腫がおきるとわかっています。重症になると、血中のカリウム濃度が低くなる低カリウム血症(不整脈や腎機能障害をおこすことがある)がおきることもあります。
また、黄芩(おうごん)についても、長期服用者の約1パーセントに肝臓障害がみられたとする報告がありますので要注意です。黄芩をはじめて服用した場合は、2ヵ月後に血液検査で肝機能に異常がないかどうかチェックするとよいと思います。
最近では、山梔子を長期服用した際に腸間膜静脈硬化症(腸間膜の静脈に石灰化が生じ、腸管壁の浮腫、線維化、石灰化、腸管狭窄がおきる)が見られるとの報告が相次いでいます。漢方薬も西洋薬も、必要なときに必要なだけ服用し、症状が改善したらやめることが基本です。 -
Q3 医師の処方がなくても買えるの?
(A) 医師の診察を受けずに、まずは自分で試してみたい、という場合には、漢方薬局やドラッグストアで買うことができます。このような薬を一般用(OTC)漢方製剤といい、294処方のOTC製剤がさまざまな形状で市販されています。セルフメディケーションの観点から、OTC製剤の活用が期待されていますが、自分で試す際には効果や副作用の有無に注意することが必要です。
多くのOTC製剤は、同じ処方名でも、生薬成分が医療用製剤よりも少なく抑えられています。ただし、中には医療用製剤と同じ量入っているものもあり、この場合は副作用が強く出るリスクが高まります。OTC製剤を飲んでも効果が感じられない、なんとなく調子が悪い、といった場合は、服用をやめ、漢方医に相談することをお勧めします。 -
Q4 同じ症状でも違う漢方薬が処方されることがある?
(A) はい、あります。たとえば、ある漢方の教科書には、肩こりの治療として15もの処方が記戦されています。ただし、肩こりの患者さんに、15種のどれを処方しても効くということではありません。肩こりに15のタイプがあり、タイプごとに処方が異なるのです。東洋医学では、同じ病名の中にさまざまタイプが存在します。医師は患者さんがどのタイプに当てはまるかを見極め、診断と処方を行います。このような考え方を、同病異治といいます。
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Q5 漢方薬と西洋薬やサプリの併用は問題ない?
(A) 医師が処方している場合は、薬に関して注意すべきことがあれば指導助言が行われます。しかし、医師が処方していない場合の、併用による副作用については使用者の自己責任になります。
サプリメントについては、日本の保険行政上は「薬」には当てはまりませんが、なかには薬理作用を持つものもあります。市販されている薬は、漢方薬、西洋薬、サプリメントを問わず、副作用は常に起こり得ること、そして服用する種類や量が増えればその分リスクが高くなるとの認識が大切です。使用者が自分で知識を得る努力をし、必要なものを最低限飲むことを心がけてほしいと思います。 -
Q6 保険診療でも漢方薬を出してもらえる?
(A) 漢方薬は大きく二種類、医師の処方が必要な医療用と、漢方薬局やドラッグストアで購入できる一般用があります。厚生労働省は、148種の医療用製剤、237種の生薬を保険適用としています。保険適用の負担割合は、一般の薬剤と同じです。保険適用外の自由診療を行う病院やクリニックもあり、その場合は全額自費負担となります。
日本の医療では、漢方薬は西洋薬と同様に扱われておりますので、原則として医師であれば誰でも処方することができます。薬によっては、診療ガイドラインに明記されているものもあります。ただし、東洋医学的な理解については医師による差がありますので、その点ご留意ください。 -
Q7 漢方薬は何年も飲み続けていいの?
(A) 何年も飲み続けてよい薬はありません。漢方薬も、そのときどきの状態に応じて服用すべき薬です。「薬」という漢字を分解すれば「楽になる草」となり、「症状があるときに使うもの」だとわかります。食べ慣れている食材や料理であっても、高熱や下痢などの体調の悪いときには、さらに体調を悪化させることがあります。漢方薬にも漫然と飲むことで、かえって体調を悪くさせるリスクがあるといえます。
生薬の古典(神農本草経)では、薬物を「上薬、中薬、下薬」に分けています。その上で、上薬は「寿命を延ばし、無毒で長期服薬可能」、下薬は「病を治す薬で、毒性が強く、長期にわたる服用はよくない」としています。下薬を長期服用すべきでないのはもちろんですが、上薬に属する薬、例えば人参でも、胃もたれや血圧上昇を招くことがあります。どのような薬であれ、症状が治まったらやめるのが基本です。 -
Q8 漢方専門医にはどうやったらなれる?
(A) 日本には日本東洋医学会認定の漢方専門医という資格があります。この資格を取れるのは、大学の医学部を卒業して医師国家試験に合格した医師に限られます。医師免許取得後に所定の研修期間を終え、内科学や外科学といった基本領域の専門医認定を受けた後に、漢方専門医の認定試験を受けるための実習に入ります。通常は、医学部を卒業してから、ここまでに6~10年かかります。その上で、日本東洋医学会認定の指導施設で3年間の臨床実習(現在は週1回以上の外来研修)を受け、「自分が担当した50症例についての報告」を提出すると、漢方専門医の受験資格が得られます。試験は、症例提示、筆記試験、口頭試問からなります。
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Q9 漢方薬服用中に飲酒は問題ない?
(A) 西洋医学では、お酒の飲みすぎは血圧を上げるとともに肝機能を悪化させるとされ、基本的に西洋薬の服用中は飲酒は避けるようにとされています。
一方、酒は漢方医学的には体内の「熱」を高めると知られています。肝機能に異常がなくても、手足の熱感、不眠、血圧上昇、睡眠時無呼吸、疾痛の悪化、不妊などのリスクが高まります。
厚生労働省が定める「健康日本21」ではアルコール一日20グラム以下が推奨されていますが、症状によってはそれ以下の量であっても、減酒、休酒を要する場合も。毎日飲酒する方へは、週2日の休酒日を設けることをすすめます。
また、漢方では酒を薬として使う場合があります。水に溶けにくい成分の生薬を用いるとき、水とともに酒を煎じ薬に入れるようにと指示された漢方薬もあります。また酒服といって、「燗冷ましのお酒をおちょこ一杯程度」、丸薬、散薬(粉薬)の服用時に用いることもあります。
酒は私たちの日常生活の中でおなじみのものですが、かなり強い薬理作用を発揮する場合もあるので、医師と相談することが肝要です。。 -
Q10 漢方薬と鍼灸は併用していいの?
(A) 漢方薬、鍼灸には、それぞれに利点があり、相補って活用するのがよいです。鍼灸は神経痛や腰痛などの痛みのある疾患に対して、即効性を発揮します。さらに、メンタルヘルス不調などの痛み以外の疾患への効果も知られています。ただし効果はそれほど長く続きません。一方の漢方薬による鎮痛効果は緩徐ですが、持続的な傾向があります。ただし例外として、こむらがえりには芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)が即効的に効く場合もあります。また、漢方薬の治療効果が頭打ちのときに、鍼灸治療を併用することで、症状が改善することもあります。
世界中で行われている代替医療の七割は鍼灸治療であるというデータもありますが、日本では、鍼灸治療に精通している医師が少ないこともあり、理解が進んでいないのが現実です。担当医および鍼灸師とよく相談したうえで治療をうけていただきたいと思います。 -
Q11 鍼灸治療には保険が適応されない?
(A) 保険医による同意書が必要ですが、①神経痛、②リウマチ、③頸腕症候群、④五十肩、⑤腰痛症、⑥頚椎捻挫後遺症の六疾患と、慢性的な疼痛を主訴とするものについては、保険による施術が認められています。ただし、「保険で鍼灸治療を行うと、同じ病名で医師が薬を処方できなくなる」といったことがおきるため、医師が同意書を作成できないこともあります。
また、鍼灸院によっては、保険に対応しておらず、自由診療で施術しているところも多いので、事前に確認することをお勧めします。 Q12 鍼は痛くないの?
(A) 痛みに敏感な人とそうでない人で異なりますが、痛みを感じたとしても、注射の痛みに比べてごくごく軽いものです。たとえば、採血で使われる鍼は太さが約0.8ミリで、先が鋭く尖っています。一方、日本の鍼治療で最も多く使われているのは、ごう鍼(毫鍼)という鍼で、太さ0.16~0.2ミリ、長さ30~50ミリほどです。日本の毫鍼は中国などで使われている鍼よりも細く、刺入する際には「鍼管」という筒が使われます。鍼管内に鍼をセットし、上の出ている部分をトントンと叩くのです。こうすると、痛みをほとんど感じることなく、まっすぐ刺せます。これは「管鍼法」とよばれるもので、江戸時代に開発された日本独自の刺入法です。現在では、世界中で用いられています。鍼灸師によって技法は異なりますが、日本では比較的浅く鍼を刺すことが多いのが特徴といえます。
場合によってはズーンとした刺激を感じることもあります。これは鍼の「ひびき」とよばれるもので、鍼の効果の指標になるものです。痛みに敏感な人、「ひびき」が苦手な人は、あらかじめ治療者にそのことを伝えておくと、軽い刺激の鍼治療を受けることができます。-
Q13 鍼は何でできてるの?必ず使い捨て?
(A) 最も多く使われているのは、ステンレス製のごう鍼で、一本ずつ滅菌包装されています。これらの鍼は感染予防の観点から、一回使用するたびに捨てられます。ただし、金製や銀製の鍼が使われる場合もあります。この場合は使い捨てではありませんが、必ず洗浄後滅菌処理が行われますので、安心して施術を受けてください。
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Q14 鍼治療を受けてはいけない人がいるの?
(A) はい、いらっしゃいます。(公社)全日本鍼灸学会が出版している『鍼灸安全対策ガイドライン」では、①緊急事態で現代医学的治療を優先すべきとき、②バイタルサイン(意識状態体温、脈拍、血圧、呼吸状態)に異常がみられた場合は、施術すべきでないとされています。また、禁忌(施術してはいけない)ではないものの、注意すべきものに、①悪性腫瘍(医師の遁導の下、痛みや薬剤の副作用に対してのみ行う)、②妊婦、③局所の熱感や腫れがある場合の局所への施術、④易感染性患者(糖尿病患者、ステロイド服用中の患者など)、⑤出血性疾患や抗凝固薬を服用中の患者、⑥発熱患者(発熱の原因特定と治療を優先させる)などがあります。
とはいえ、多くの場合は治療を受けることができますので、あらかじめ治療者に伝えておくことで、とくに慎重に施術してもらえると思います。なお、これらに該当しない場合でも、飲酒後は施術を受けないようにしてください。 -
Q15 灸にはいろんな種類があるの?
(A) 灸には大きく「直接灸」と「間接灸」があります。直接灸は、モグサを直接皮膚の上に置き燃焼させて熱刺激を与えます(透熱炎)。大抵は、米粒大、半米粒大、糸状にひねったモグサを用いますが、近年は完全に燃焼させる前に消すことも多く(七分灸)灸痕は残りません。
間接灸は、介在物の上にモグサをおいて燃焼させるか(台座灸、隔物灸など)、あるいはモグサを棒状に固め和紙で包んだ灸(棒灸)で輻射熱(ふくしゃねつ)を与える方法などがあります。これらも灸痕を残しません。最近では、火を使わず煙も出さない電気温灸器を用いる場合もあります。
いずれも、温熱刺激によって体調を整えるもので、血流促進による冷えやむくみの改善、痛みの軽減、免疫力の向上などの効能が期待できます。 -
Q16 鍼灸師にはどうやってなるの?
(A) 鍼灸師の資格(はり師、きゅう師)は、国家資格で、専門学校などの鍼灸師養成課程(三年制)、あるいは医療系大学の鍼灸学部・学科など(四年制)を卒業し、国家試験に合格することで得られます。医師も鍼灸の施術が認められていますが、実際に鍼灸を実践できる医師は少数です。
興味深いことに、「鍼灸を施術できる資格」は、国によってさまざまです。中国では中医師、韓国では韓医師が行います。ヨーロッパのフランス、イタリアなど多くの国では、医師が施術しますが、ドイツでは、医師・助産師とハイルプラクティカー(自然療法士)、イギリスでは、医師以外に助産師、看誰師、理学療法士のほか、学会が認定した鍼師なども行います。一方、アメリカでは、医師以外では、国家資格を取得した鍼灸師、州独自の資格を取得した鍼灸師が施術しています。 -
Q17 鍼治療を受けるとだるくなることがあるのはなぜ?
(A) 鍼治療に慣れていない人や、東洋医学で言う虚証の人は、普通の鍼治療を受けると、だるくなることがあります。そのため、このような人は、刺激量を減らした(細い鍼で浅く刺したり、「ひびき」のない刺激にしたりする)治療が望ましいといえます。ただし、だるさを感じても、ほとんどの場合、症状は一日くらいでおさまり、治療の回数を重ねるごとに慣れてきます。だるさを感じた場合は、次回の施術前に治療者に伝えれば、刺激量を考慮してくれるでしょう。
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Q18 灸はいつどのくらいしたらいいの?
(A) 鍼も灸も、鍼灸院などで施術を受けるのが通常ですが、灸の場合は「セルフ灸」といって自分で台座灸などを用いて施灸することが可能です。しかし、その場合も事前に鍼灸師などから施灸部位、施灸の手順、注意点などの指導を十分に受けてから行ってください。。
セルフ灸は、自宅でリラックスできる時間帯がおすすめです。ただし、入浴後、飲酒後、食後すぐ、発熱時などは避けてください。最初は1日1回、1~3カ所、指導を受けたツボに施灸しましょう。もし、熱いと感じたら位置を少しずらすか、取り除いてください。自分が心地いいと感じる範囲内で行うのがコツです。
【鍼灸】
月刊誌『東京人』より